パッケージ機能による配布
エクステンションの配布はバイナリによる直接配布に加えてパッケージ機能による配布が可能です。パッケージ機能を用いることでエクステンションやサンプルなどのコンテンツをバージョン管理した上で他ユーザーが利用することが容易になります。パッケージは Next Designの拡張機能 で配布できます。
パッケージ化とそのメリット
パッケージ化とは Next Design の拡張機能を配布できるファイル形式として作成することです。エクステンションの配布やアップデートが非常にシンプルになります。主に次のようなメリットがあります。
- インストールやアップデートが容易
- ワンクリックでエクステンションのインストールやアンインストール、アップデートができるようになります。
- 新しいバージョンの公開時に Next Design の画面でユーザーに通知できます。
- バージョン管理が容易
- 複数のバージョンのエクステンションを配布できるためバージョン管理が容易です。
- Next Design の画面上でパッケージの概要やバージョン別の変更点を表示できます。
- 特定の Next Design のバージョンで動作するようなエクステンションを開発できます。
- 専用のサーバー不要で配布できる
- 独自のパッケージ展開用フォルダを登録できるため、ネットワークフォルダや GitHub/GitLab、Subversion 等のバージョン管理ツールを用いた簡易的な配布が可能です。
- プロファイルやサンプルを配布できる
- エクステンションに限らず、プロファイルやプロジェクトのテンプレートを配布できます。
前提
パッケージ化に必要なツールや環境を準備します。すでにインストール済みの場合はスキップしてください。
NDExtをインストール します。
NDExt
はエクステンションの開発を支援するコマンドラインツールです。コマンドプロンプトから次のように実行するだけでインストールできます。このプログラムを動作させるには .NET Core 3.1 SDK のインストールが必要です。dotnet tool install --global NDExt
Visual Studio で プロジェクトテンプレート を用いてエクステンションのプロジェクトを作成します。
コマンドプロンプトから次のコマンドを実行すれば Visual Studio のテンプレートとして登録されます。
dotnet new --install NextDesign.Extension.ProjectTemplates
パッケージの作成
Next Design のエクステンションのパッケージを作成するにはいくつかの方法がありますが、 Visual Studio とコマンドラインツール NDExt
を利用した方法が最もシンプルです。ここでは Visual Studio を用いた設定方法について次の順で説明します。
- Visual Studio で エクステンションのプロジェクトを作成 します。
Visual Studio のプロジェクトの設定ダイアログでパッケージの情報を設定します。
Visual Studio 2022 の場合は次のようなダイアログとなっています。 Visual Studio 2019 では異なる UI となっていますがプロパティは同じです。
各プロパティの説明は次の通りです。
設定項目 説明 パッケージID パッケージを区別する一意の名前です。 "MyCompany.SomePackage" のように指定します。アルファベットと .
や数値のみを用いてください。下図の①に該当します。パッケージバージョン パッケージを識別するバージョンとして利用します。 “1.0.0” などになります。下図の③に該当します。 説明 パッケージのタイトルと説明に利用します。任意の文字列となります。パッケージのタイトルには1行目のみ利用されるのに対して、パッケージの説明には全文が利用されます。下図の②と⑤に該当します。 作成者 パッケージの作成者の情報です。会社名等を入力してください。 プロジェクトの Url パッケージに関するサイトの Url です。下図の④に該当します。 [拡張機能の管理]ダイアログでは次のように表示されます。
注意
- パッケージ ID はすべてのパッケージでユニークになるようにしてください。また日本語名はエラーになるので使わないでください。
- 説明プロパティはパッケージのタイトル、パッケージの説明として利用します。
- 新しいバージョンを公開する場合は
パッケージバージョン
を更新してください。 "1.0.0" で作成した場合の更新は "1.0.1" のようにより大きな数値にします。 - バージョン番号の形式が、x.x.x(xは任意の数字)ではない場合は、インストール後に Next Design から無効化できません。
パッケージのビルド
パッケージのビルドには NDExt を用います。 コマンドラインで次のようにコマンドを実行すると、実行ディレクトリ以下にあるすべてのエクステンションのプロジェクト( csproj )を探し、ビルドしてパッケージ化します。
C:\MyProjects\NdExt1\NdExt1> ndext pack
ndext pack
コマンドの実行に成功するとndpackages
という出力フォルダに nupkg ファイルが作成されます。このファイルがパッケージファイルです。- パッケージファイルは
NdExt1.1.0.0.nupkg
というように、{PackageId}.{Version}.nupkg
という形式になっています。 - nupkg の中身は zip ファイルです。この zip ファイル内にパッケージの定義ファイル( nuspec ファイル)とエクステンションやプロファイルのファイルが含まれています。
nupkg のファイルを閲覧編集できるツールである NuGet Package Explorer で nupkg
ファイルを開くと次のようになっています。
- extensions フォルダの下の数字は対応する Next Design のバージョンです。そのサブフォルダに配布するエクステンションのバイナリが配置されます。
- samples , templates は Next Design のサンプル、テンプレート機能を登録する場合に利用します。
NDExt new
でプロジェクトファイルを作成した場合、pkgContents
フォルダのsamples
,templats
フォルダが作成されますので、その下にNext Designのプロジェクトファイルを配置します。ndext pack
でパッケージをビルドすると自動的にパッケージに登録されます。
注意
- ビルド時には Next Design を終了しておいてください。 Next Design を起動しているとパッケージ化に失敗する場合があります。
- サンプルやテンプレートのファイルやドキュメントなど、日本語のファイル名をパッケージの構成ファイルに含めると失敗するのでファイル名は英語にしてください。
パッケージの公開
Next Designの拡張機能 の[設定]ボタンから、 パッケージソース
を追加し、この nupkg ファイルを配置すれば公開できます。パッケージソースとはディレクトリもしくは NuGet サーバーと呼ばれる Web サーバー( Web サイト)となります。ここでは最も簡単な方法としてパッケージソースにフォルダを用いた公開について説明します。
パッケージソースを追加します。
[ファイル] メニュー > [拡張機能の管理] をクリックして、[拡張機能の管理]ダイアログを開きます。
[設定]ボタンを押下して[拡張機能の設定]ダイアログを表示し、[追加]ボタンを押下します。
パッケージを配布するフォルダ指定します。ネットワークやローカルフォルダとなります。
パッケージソースにパッケージをコピーします。
パッケージソースのフォルダにビルドした nupkg ファイルをコピーします。
各ユーザーにパッケージソースの情報を展開し、拡張機能としてインストールしてもらいます。
これで Next Designの拡張機能 としてパッケージを公開できます。
ヒント
パッケージソースのフォルダを使った展開には次の方法が考えられます。
- ユーザーがアクセスできるネットワークフォルダで共有する
- 社内や組織内のみで共有するには最も単純な方法です。
.nupkg
を格納したネットワークフォルダをパッケージソースとして設定してください。
- 社内や組織内のみで共有するには最も単純な方法です。
- OneDrive、GoogleDrive などでフォルダ共有する
- クラウドで社外ネットワークとも共有する方法です。クラウドドライブ上に
.nupkg
を格納したフォルダを作り複数ユーザーで共有してください。各自はローカルのドライブをパッケージソースとして設定します。
- クラウドで社外ネットワークとも共有する方法です。クラウドドライブ上に
- GitHub / GitLab や Subversion を用いて公開する
- Git 等に馴染みがあり、組織やネットワークを超えて複数のユーザーで簡易的にエクステンションを公開する場合に有効な方法です。 GitHub や Subversion 等のローカルの作業フォルダをパッケージソースとして登録します。
- 構成管理の機能で最新にアップデートします。新しいパッケージをユーザーに公開するにはリポジトリを最新にしてもらう必要がありますが、公開に特別な環境は必要ありません。
パッケージのアップデート
パッケージをアップデートするにはバージョン番号を更新してパッケージを作成します。パッケージソースのフォルダには同じパッケージ Id で複数のバージョンを格納できます。
- プロジェクトの設定の
パッケージバージョン
を新しいバージョンに変更します。例えば "1.1.0" の場合は "1.2.0" のようにします。 - パッケージをビルドします。
- 作成した
.nupkg
ファイルは、MyExtA.1.2.0.nupkg
のようになっているとします。このファイルをパッケージソースのフォルダに配置します。
例えば、パッケージソースのフォルダ内のファイル構成が次のようになっていると、 MyExtA
と MyExtB
のパッケージがあり、それぞれ2つのバージョンを公開していることになります。
packageSource\
MyExtA.1.0.0.nupkg
MyExtA.1.2.0.nupkg
MyExtB.2.0.0.nupkg
MyExtB.2.1.0.nupkg
新しいバージョンを公開すると Next Design のステータスバー上でアップデート可能なパッケージがあることを通知アイコンで確認できます。
アイコンをクリックすると[拡張機能の管理]ダイアログが表示されます。アップデートがあるパッケージを確認できるので[更新]ボタンを押下してアップデートできます。
高度なトピック
ここではパッケージによる配布に関する高度なトピックについて説明します。
スタートページに表示させるプロジェクトを登録する
作成した Visual Studio プロジェクトにある pkgContents
フォルダにサンプルやテンプレートの Next Design プロジェクトファイルを配置することで、 Next Design のスタートページに表示できます。
pkgContents
フォルダにスタートページに表示させるサンプルやテンプレートのプロジェクトを登録します。
note
- ファイルのプロパティで出力ディレクトリにコピーするように設定する必要はありません。
- サンプルとテンプレートともに、プロジェクトファイルのコピーを新規作成します。動作の大きな違いはありませんが、プロファイルを配布する場合はテンプレート形式で配布することを推奨します。
パッケージを国際対応する
次のように、 タイトル
と 説明
に複数言語の設定ができます。現在の UI の表示言語に従って自動的に適切な言語を選択して UI に表示します。
国際対応のパッケージ情報を入力します。
プロジェクトの設定で
{ "ja" : "日本語の説明" , "en" , "english here"}
のように日本語と英語向けのテキストを入力します。タイトルには1行目のみ利用されるのに対して、説明には全文が利用されます。Next Design の表示言語に従ってパッケージの表示テキストが切り替わるようになります。
なお、 NuGet Package Explorer で確認すると
Description
が次のようになっています。
動作するNext Designのバージョンを指定する
Next Design のバージョンを指定するにはパッケージのビルド時に -v
引数で動作する Next Design のバージョンを指定してください。このバージョン以上で動作するようになります。
C:\MyProjects\NdExt1\NdExt1> ndext pack -v 2.5
ビルド結果は次のようになります。
独自のパッケージ公開サーバーを用意する
Next Design のパッケージのサーバーは NuGet V2/V3 プロトコルに準拠しています。組織など限られたユーザーのみアクセスできるサーバーをリリースするには独自の NuGet サーバーを準備する必要があります。詳しくは Microsoft の 独自の NuGet フィードをホスティングする を参照してください。
パッケージ内のフォルダ構成
すべてのアプリのバージョンで動作させる場合、 extesion
の直下の番号を 2.0
にします。
.\extension\
2.0\
NdExt1\
sampleExtension.dll
markdig.dll
複数の Next Design のバージョンに対応する場合は次のようにします。
.\extension\
2.0\
sampleExtension.dll
markdig.dll
manifest.json
2.5\
sampleExtension.dll
markdig.dll
manifest.json
複数のエクステンションを配置する場合は次のように配置をします。
.\extensions\
2.0\
Ext1\
images\
xx.png
ext1.dll
manifest.json
Ext2\
images\
xx.png
ext2.dll
manifest.json
.\samples\
2.0\
aaa.nprot
.\template\
2.5\
aaa.nprot
bbb.nprot
その他のツールを用いたパッケージ作成の方法
Next Design のパッケージは NuGet の仕組みを利用しています。そのため、 Visual Studio と NDExt を用いる以外に次の方法があります。
- nuspec ファイルを直接作成し
dotnet pack
コマンドでパッケージ化する - Nuget Package Explorer を用いて作成する